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GS二次小説 「せめて絶望のない世界をあなたに〜外伝〜」



第002話

見渡す限りの廃墟・・・
嘗て人が住んでいてその繁栄の極みを見せていた街並みは、たった一時間ほどでその姿を瓦礫の山へと変貌した。
その原因となったのがこの瓦礫の山の遥か上空で戦いを繰り広げている者達だった。

その光景は初めて見たものにとっては多勢に無勢だと思うかもしれない。それも仕方のないことで、ざっと見ても多勢の方は軽く五十は超えるほどで、無勢の方は見る限り三人しかいない。
しかし、その光景は徐々に変化していった。
圧倒的不利な状況であった筈の三人の方がなんと五十を越える軍勢と対等に渡り合い、尚且つ今ではその数も三十程となって逆に押しているようにも見える。



「でりゃぁぁぁぁっ!!」

掛け声とともに右手に持っていた黒い刀「魔剣蓮螢」を袈裟切りに振り下ろす横島。
相手は横島たちを探し出す為に編成された先行隊の部隊長クラスの天使だ。
その天使は振り下ろされた刀を手に持っていた錫で防ぎ霊波砲を放って横島が慌てて離れたところで距離を取った。
しかし、横島が体制を整える前に天使は横島の霊的急所に次々と錫を突く。
まともに一つでも身体に入れられた場合、即それが死へと繋がるのでサイキックソーサーや蓮螢を使い時には弾き、時には捌いて防ぐ。

ぐらっ・・・

横島は天使の執拗なまでの攻撃に集中力を維持できず、一瞬身体が流れてしまった。
その一瞬を逃すはずも無く、その天使は横島にとどめの一撃を加えようと錫を大きく引き戻し、一気に突き出した。

ガッ・・・!! ・・・・・・ザシュ・・・!!!!

その一撃に込められた霊力が開放され一瞬視界がゼロになる。
そしてその光が収まり再び視界が開けたとき、そこに立って浮かんでいたのは天使ではなく横島の方だった。
横島はいつまでも攻撃をこのまま受け続けたら危険と考え、わざとバランスを崩した。
そして相手が大振りに攻撃を仕掛けてくるのを誘ったのだ。
横島は数々の戦いを経験したことによって、どの状況で、相手がどう攻撃してくるかある程度読めるようになっていた。そして攻めあぐねて焦ってきたところで絶好の隙を創り、そこに大振りの一撃をさせたのだ。
攻撃される場所さえ分かれば横島にとってその攻撃を防ぐのは簡単である。
常に常備している文珠の一つを使い相手の攻撃を「防」ぎ、確実に決まったと思って攻撃後に緊張を解いたところに蓮螢を横薙ぎにして相手を切り倒した。

横島の持つ刀は二種類あり、魔剣蓮螢と神剣蒼竜と名付けている。これは横島に内包されている力を顕現させた物で霊波刀の一種である。
これは相対する相手のときに最大の力を発揮する。つまり神族を相手にしているならば魔剣を、魔族を相手にしてるなら神剣を・・・といった感じだ。
その効力は凄まじくその霊波刀が放つ霊圧は一種の世界を形成させる。それは魔剣なら魔界にいるように感じ、神剣なら天界にいるような感覚になる。
現在は天界も魔界も人間界との隔たりが無くなり、神魔族共に本来の力を発揮させることが出来る。
しかし横島の持つ霊波刀によって霊力の回復が出来ないようになってしまうのだ。
さらに厄介なのが、この霊波刀に傷つけられると、そこから霊力魔力が奪われていくということである。これは昔狼王との戦いの際相手が持っていた刀・・・妖刀八房をヒントにして創り上げたからだ。

「ハァ・・・・・・さて・・・次に行きますかっ!!」

横島は疲れた体に鞭打って未だ多く残っている神族の中に飛び込んでいった。



タマモの方に場所を移すと、タマモは猿神と共に神族の相手をしていた。

「・・・これでどうよっ!!」

タマモは狐火を五つ作り出しそれで五芳星を描いた。するとその各頂点の狐火が五芳星の中心に円を描きながら収束し、一つの人の顔ほどの蒼白い炎になり神族の軍団の中に向かっていった。
タマモと猿神が相手にしているのは中級の神族たち。彼らを相手にした場合タマモの攻撃はほとんど効くことは無い。嘗ての玉藻御前の霊力を取り戻したなら話は変わっていたが、今のタマモは記憶のみしか戻っていない。
そこで、その記憶から創り出したのがこの蒼白い炎である。これの能力は単純にその温度が高いことにある。しかしその温度が半端でなく高い。元がタマモの霊力なので対象と設定した者意外に危害は加えないが、その対象となった物にとってはまさに太陽が向かってくるようなものだった。
流石の神族もこれには迂闊に迎え撃つことも出来ず回避に専念する。だがその隙を狙って猿神が確実に仕留めていく。
横島が一人で奮闘している中二人はこうして危なげなく神族の相手をしていた。
元々猿神は最上級神族に連なる神族の一柱である。霊力そのものはあと一歩一般的な最上級神族には及ばないが、その身が体得している武術がその穴を埋め逆に飛び越えているのだ。猿神の攻撃をまともに対処できる中級神族なぞいるはずが無い。

さらに数時間後、瓦礫の山となっている地上に降り立った三人は辺りに散らばっている肉片や血にむせることなく相手の応援が来る前にその場から立ち去った。





「っあ〜〜〜〜・・・久しぶりの水浴びだから気持ちいいーーー」

神族からの追っ手を退けた横島たちは横島の文珠によって隠れ家として使っている森の中に転移していた。
何故見つからないのか・・・これは横島が張った文珠のおかげもあるが、それ以上にここはもともと霊的濃度が高く一種の目隠しにもなっていたからである。
今まで霊視出来ていたところがある日突然霊視出来なくなったらとしたら、そこには誰かが結界を張っていますと言っているような物である。
しかし元々霊視が難しい所に結界を張ったとしても、単にその場所の霊的濃度が濃くなっただけだと思われたりするからだ。
それに此処を見つけてくれたのは既に永遠の別れを告げた天界一の調査官なのだから・・・彼女のためにも此処を発見されるわけにはいかない。



「老師も入ればいいのに・・・どうして入らないんだ?」

「ワシは念のためお主等の後でいい。終わったら呼んでくれ」

横島がタマモの髪を丁寧に洗いながら猿神に一緒に入らないか?と聞いても、猿神は万一のため時間をずらして入ると言ってその場から去っていった。
別に二人の邪魔をしたくなかったということは・・・考えすぎであろう。

「こうしてタダオに髪を洗って貰うのって好きだな・・・」

タマモは気持ち良さそうに眼を細め横島の自分の自慢の髪を触る指に意識を移した。

「初めてお前の髪の毛を洗ったときからもう随分経つな・・・・・・」

自分に惜しげもなく生まれたままの姿を晒し、髪を洗って貰っている感触を楽しんでいるタマモを穏やかな瞳で見つめながら横島はまだ妙神山が存在し、楽しかった日々とその終焉を迎えた日のことを思い出していた。











「楽しみですね美神さん」

おキヌは今山道を歩いている。
ここは妙神山に続く道。後数分で鬼門達が妙神山の門を守っているところまで着くだろう。
一緒に歩いている美神の方を見ると何処となく嬉しそうに見えた。どうやら美神も久々に彼に会うのは嬉しいのだろう。

「アイツがこっちに住めないのは理解できるんだけど、毎回この山道を登るのは面倒ね・・・小竜姫様に相談してゲートとか繋いでもらえないか聞いてみようかしら」

「それっていい考えだと思います!そうすれば横島さんにお食事を作りに来たりも出来るし・・・」

なんか言った?とジロリと睨むように視線をおキヌにやり、その迫力におキヌは自分の目にも確認できた鬼門が見えたとき乾いた笑いをしながら美神に言った。

「あ、あはは・・・何言ってるんですか美神さん。そんなことしませんよー・・・そ、それより見えてきましたよ」

鬼門も二人に気付いたらしく片方が門の中に入っていった。恐らく小竜姫達を呼んでいるのだろう。

「おお!よく来たな二人とも。今小竜姫様達を呼んでいるゆえ、しばし待たれよ」

そこで鬼門はいつも妙神山に来るときに比べ人数が少ないことに気付き美神に尋ねた。

「ん?そういえばシロ殿が見当たらないが、どうなされた?」

「シロ?ああ、なんか人狼族の長に呼ばれて里帰り中よ。何でもたまには帰ってきて元気な顔を見せろとかどうとか・・・。ま、もうお盆の時期だから丁度いいんじゃない?」

美神は今来ていないシロについて簡単に説明した。
本当は此処に来ることをシロに伝えたところ是が非でも着いていきたいと言ってきたのだが、美神は過去結局生きていたとはいえ母親がいなかった時期があったため、両親のありがたさを知っている。
だからたまには里に戻って両親の墓にでも今までの報告でもして来なさいと言って、シロを半ば強引に里に戻したのだ。



しばらく美神はおキヌと鬼門と話していたところでようやくもう一人の鬼門が小竜姫を連れて戻って来た。

「お久しぶりです、美神さんとおキヌさん。お正月に会ったとき以来ですからもう半年振りですか?元気そうでなによりです」

小竜姫はそう言って美神とおキヌに挨拶をする。

「はい。お久しぶりです、小竜姫様」

「もうそんな前だっけ前に来たのは?なんかしょっちゅう会ってる気がするのよね」

二人は小竜姫との再会の挨拶もそこそこにして此処に来た目的を口にした。

「まぁ、今日は暑中見舞いって感じで来たのよ。あいつの様子も気になるしね。案内してくれない?」

「ちょ・・・美神さん。もうちょっと言い方が・・・」

「ふふっ。いいですよおキヌさん。・・・・・・そうですね、では付いてきてください」

鬼門にあとを頼むと小竜姫は二人を連れて猿神と修行をしているであろう横島のところに向かった。





修練場に着いた美神たちが見たのは目を見張る光景だった。
それと言うのも猿神がいわゆる戦闘モードといえる巨大な猿に変身しており、ほとんど手加減なしで横島と戦っているように見えたからだ。
小竜姫に急いで聞いてみるとあれでも猿神は七割程度しか出していないらしい。
しかしそれでも猿神の人間界で出せる最大霊力が25000マイトであるから、その七割ということは実に17500マイトもの強大な霊力である。
それほどにまで高い霊力を有し、さらには独自の拳法を用いる猿神とほぼ互角の戦いを見せる横島は最早人間業ではない。
そんなことを思いながら美神はもう本当に人間ではなくなってしまったんだと改めて痛感した。

そのまましばらく観戦していたが、猿神が突然霊圧を高め勝負に出た。
横島はそれに気付き、猿神のその一撃に耐えるため自分の身長ほどもあるサイキックソーサーを前面に展開した。しかし横島はそのまま耐えるのではなく、そのサイキックソーサーを多重に展開した。その数二十枚。
美神は多重にそれほども展開できる横島に驚きながらも、その一枚一枚に籠められている霊力を小竜姫に聞いて閉口するしかなかった。
そして猿神はそんな横島を見てにやりと笑い、霊力が籠もった如意棒による渾身の一撃をその多重に展開したサイキックソーサーに向けて放った。

パキイィィィィィン・・・

そんな音を立てながら次々と粉砕されていく横島のサイキックソーサー。
そのあまりの攻撃力に何も考えられなくなってしまった美神に更に追い討ちをかける現象が起こった。
十五枚程粉砕し、更に攻撃に集中する猿神も目の前で起きたことに驚きを示した。
・・・霊力はその使用者の思い通りにすることが出来る。
盾は硬い方がいいのだろうか?確かにそうだろう。しかしその硬度を超える攻撃の前では粉砕される。
なら丸みを帯びて攻撃を逸らせるようにすればいいのだろうか?しかし相手が超一流ならばそのようなことは無意味だ。
なら・・・どうしたらいい?攻撃を防げないなら防がなければいい。止めることも受け流すことも無理ならば・・・・・・その威力をどうにかして吸収するほかない。
そして横島はその考え通りに実行した。
すなわち、サイキックソーサーを柔らかくすることで少しずつその突進力を吸収することにしたのだ。
ぎりぎりまで硬度を持たせ、しかし柔軟性を持たせることで猿神の攻撃を止める横島。
徐々にではあるが猿神の怒涛とも思えた突進は緩み始め、気が付けば攻撃時の半分ほどになっていた。

しかし横島の展開したサイキックソーサーもただでは済まず、一枚、また一枚と砕けていく。
そしてほとんど突進も止まりそうな猿神と、最後の一枚になったサイキックソーサーを支え続ける横島は同時に叫んだ。

「ぬうぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」

「うをぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!!」

そして何かが割れるような音がして二人の攻防は終了した。





「はぁはぁはぁ・・・・・・くそっ!また届かなかったか・・・!」

「ふん。まだまだそう簡単にやられはせんわ。しかしもう七割では限界のようだな・・・明日からは全力でいくから覚悟しておくのじゃ」

横島は自分の首元に突き付けられている如意棒を見ながら苦々しげに零した。
猿神はそんな横島にそう評価をして未だ気が抜けて呆然としている美神とおキヌの方に向いた。

「小竜姫。そこで呆けている二人を居間に連れて行ってやれ。わしもこやつを連れてすぐに行く」

「は、はい!それでは老師、お先に失礼します」

何なのよあの非常識っぷりは・・・とぶつぶつ言っている美神とかっこいいです横島さん・・・と遠くに意識を飛ばしているおキヌを引きずりながら小竜姫は修練場から出て行った。



「ほれ、おぬしもいい加減落ち着いてきたのならとっとといかんか」

猿神は横島の息が落ち着き、霊力もそこそこ戻ってきたのを確認すると先に行くように言った。

「もう少しくらい休んでも・・・いや、何でもありません・・・・・・それじゃあ美神さんたちに挨拶に行きますね」

何か言いかけた横島を如意棒を振り被ることで黙らせた猿神は横島の姿が見えなくなると姿を隠しているその者に話しかけた。

「いつまでそこで隠れているつもりじゃ?」

すると修練場の一番奥が霞んだと思ったら髪の毛を九つのポニーテールにしている女性が出てきた。

「なんだ、気付いてたんだ。ヨコシマには気付かれなかったのにな」

「ふん。わしを誰だと思っている?斉天大聖老師だぞ?その程度の幻術なぞ簡単に見破れる」

そういう猿神にナインテールとも呼べる髪をした女性・・・タマモは思い切って言った。

「私もここに来て数ヶ月、かなり来た頃に比べて強くなったと思うわ。でも、まだダメなのよ。足りないの・・・このままじゃあいつまで経ってもアイツの、ヨコシマの横に立つことなんて出来ない」

猿神はあの日横島が下界から離れ妙神山で暮らすようになって、すぐにあとを追って来たと思われるタマモにも妙神山の修行をさせていた。
タマモはもともとの才能もあったのか、どんどん強くなっていき嘗て美神が行ったシャドウを用いた修行も完了したが、そんなときでもここまで何かに耐えるようなタマモの表情を見たことがなかった。

「・・・・・・で、どうしたいのじゃ?もうおぬしが出来る修行はわしの行う加速空間での物しかないが?」

タマモは強く何かを決心した表情でそれを猿神に伝えた。

「いいえ、それでもだめ。それを行っても十分じゃない。私はもっと強くなる方法を知っている。でもそれは私一人では無理なのよ。そしてその方法はもしかしたら私が私ではなくなってしまうかも知れない。・・・でも、私は負けるわけにはいかないの。ルシオラにも美神にも小竜姫にもおキヌちゃんにもバカ犬にもね・・・・・・そして私自身にも」

「そうか。確かにわしならそれは可能じゃ。しかし横島はそれを恐らく望まんぞ?」

「ヨコシマのことはいいのよ。私がしたいから。それで理由は十分でしょ?」

そういって決意を秘めて笑うタマモを見て、横島にはもったいない女性だと思いながら猿神は首肯した。

「ではいくぞ・・・自分を見失うな。見失えばもうそこにいるのはタマモであってタマモではなく、それは既に金毛白面九尾狐だぞ?」

それでもなんら変わらないタマモに猿神は決意の強さを知り、上手くいくことを信じてその術式をタマモにかけた。



その術式とは嘗てのタマモ・・・金毛白面九尾狐と言われたありとあらゆる前世の知識と人生を追体験することで霊格を上げ、それと共にその知識や経験を自分の物とする術式。
しかしそれは一歩間違えれば今の自分を見失い全ての前世と現世が交じり合う存在になってしまう。

「アアア・・・アアァァァ・・・・・・イヤアァァァァァァァ!!!!!!!!」

猿神はものすごい勢いで霊格があがっていくタマモにその力が外に漏れないようにするために、タマモの周囲に結界を張りその結界が出来上がったのを確認すると美神たちが待っているであろう今にゆっくりと歩いていった。





「それにしてもほんとに久しぶりですね、美神さん。そういえばシロの姿が見えませんがどうしたんですか?」

横島は久しぶりに見る自分の元上司にそう口火を開いた。
美神は此処に来るときに鬼門に話したことと同様の内容を話した。

「そっか、久しぶりにアイツにも会って散歩は無理でも軽く手合わせくらいはやりたかったんだがな」

そういう横島の表情はどこか寂しげだった。

「まぁタイミングが悪かったと思って潔く諦めなさい」

「そうですよ。次来るときはちゃんとシロちゃんも連れてきますからそれまで待っていてください。ところでパピリオちゃんはどうしたんですか?姿が見えないようですが」

美神の言葉に続くようにおキヌが言い、パピリオの姿が見えないことに疑問に思い聞いてみた。

「パピリオなら昨日一週間ほど休みが取れたって言って、突然来たベスパが魔界を案内するって言ってどっかに連れて行ったぞ」

だから今は静かで過ごしやすいと言って笑う横島に、美神は先程見た猿神との修行について聞くことにした。

「そんなことはぶっちゃけどうでもいいのよ!横島クン、あの霊力は何なのよ!?軽く一万マイトはあったそうじゃない!!」

がぁーとテーブルに手を着き身体ごと乗り出して問い詰める美神に、横島はおろおろしながら横手にいる小竜姫に助けを求める。

「美神さん、落ち着いてください。簡単にですが説明しますから」

小竜姫にそういわれてしぶしぶながら姿勢を正す美神。

「わかったわよ。・・・で、どういうことなのよ?あんな霊力いくらなんでもありえないわ」

「横島さんが此処に来る前に美神さんやおキヌさんに話したことは覚えていますか?」

そう言って二人に確認をする小竜姫。

「ええ、覚えているわ。かなりショッキングなことだったからね」

「はい、横島さんが魔族になってしまったことですよね?私にはそれがどういうことかよく分かりませんが、覚えています」

おキヌは内心でそのせいで一ヶ月はろくに食事ものどを通らなくなり、美神にいたっては仕事を全てキャンセルして部屋にこもっていたくらいだ。
時々嗚咽が聞こえていたことから部屋で何をしていたのかは想像に難しくない。
今こうして吹っ切れているのも、もしかしたら単にやせ我慢をしているだけかもしれないと思ったりもしている。

「はい。本来私達神族やワルキューレさん等の魔族は人間界ではそれぞれの世界の境界に特殊な結界が張ってあり、本来の力のおよそ二十分の一程度しか使役することは出来ません。それは既にご存知のはずです」

そういって一旦区切り美神とおキヌに確認を取る小竜姫は二人が理解していることを確認して続ける。

「しかし横島さんは神界でも魔界でもなくこの人間界で産まれた魔族です。まぁ正確には人魔・・・というものに区分されるかもしれませんが。つまり本来なら神界や魔界から漏れる僅かな聖気や瘴気で存在を保たなければならない私達なのですが、横島さんは違います。何がどう作用しているのかは解明できていませんが、横島さんは人間界に漂っている霊気を自分の身体に合うように変質させてから吸収しているのです」

「ちょ、ちょっとそれってつまり本来なら力を制限させられる魔族の力を横島クンは制限なく使えると言うの!?」

「えっ?それってどういうことなんですか美神さん?」

美神は小竜姫の説明から横島の異常性に気付いたが、おキヌはどうもよく分からなかったらしい。

「いい?おキヌちゃん。簡単に言うと神族や魔族は人間界に存在するためにはその力のほとんどを出すことが出来ないの。でなきゃあの時アシュタロスなんて最上級の魔神に勝つことなんて到底無理だったわ。ここまではいい?」

そのくらいの知識は六道女学院で習っているようでおキヌはしっかりと頷いた。

「で、問題は横島君なんだけど。彼の体は人の部分もあるそうだけどほとんど魔族と同じと思っていいらしいのよ。だから多少は人間界でも人間だったことからか霊気を得ることで自身の霊力を回復できるんだけど、魔族の部分が強いからそれだけじゃ力を全て使えないのよ。小竜姫様みたいにね。でも横島クンは魔族としての力を使うための霊気というか・・・魔力なのかしら?とにかく横島クンが最も力を出すことが出来るエネルギーを、自分の体内で作り出して使用することが出来るのよ」

「はぁ・・・えっと〜・・・・・・」

「わかったわ。御託抜きでいうと、横島クンは力を制限されることなく使用することが出来るのよ。それが魔族としての力だからとんでもなく強いってわけ。わかった?」

「それならなんとかわかります。凄いんですね横島さん!・・・ってことは小竜姫様の本当の霊力はどの位あるんですか?」

なんとか理解してもらって疲れた顔をしている美神に横島はお茶を注ぎ、此処からは自分が言いますと小竜姫に断った。

「小竜姫様は人間界では2500マイト程だから、神界に戻れば50000マイトくらいだよ。俺が今全力で17000マイトだから神界で戦ったら全然勝てないけどね」

それでもすごいですよ!と目を輝かせながらおキヌは横島に言った。
そのとき丁度猿神がバナナを手に美神たちのいる居間に入ってきた。

「なにやら小僧のことを話していたみたいだが、しみったれた話はなしにして夕飯じゃ。小僧もいい加減腹が減っているだろうしの」

「そうですね。では皆さんしばらく待っていてください。今夜はご馳走ですから期待してくださいね」

小竜姫はそれまで話したいこともあるでしょうからじっくりと話していてください。といって部屋を出ていった。

「そういえばタマモちゃんの姿も見ませんけど横島さん知ってますか?」

美神とおキヌはタマモが妙神山で厄介になっているのを知っている。
始めは横島のところに行くということで、そのことを人工幽霊一号に聞いていろいろともめたりもした。
しかし自分達は行動できず、彼女は行動した。このことにどうしようもない敗北感を感じ、結局タマモのことは放って置くことにしたのだ。

「ん?多分どっかでぶらぶらしてんだろ?アイツは修行意外だと結構何処にいるのか分からんからな。老師は知ってるか?」

今までのタマモの行動を分析して答えるが一応猿神にも聞いてみることにした。

「わしが知るはずなかろう。それよりも勝手にわしのバナナを取るな」

おもむろにバナナを取ろうとした横島からバナナを遠ざけ、何も知らないという感じに猿神は言った。







夕食が終わってもタマモは姿を現さなかったが、そろそろ美神たちが帰るというので横島と小竜姫と猿神は妙神山の入り口まで二人の見送りに来ていた。

「毎度のことで悪いわね。わざわざ文珠で帰してもらえるなんて」

「いえ、俺に出来るのはこのくらいっすから。それじゃあまた来てくださいね」

「次はちゃんとシロちゃんも連れてきますから!そのときは今度は私が料理を作りますね」

「ああ、期待してるよ。それじゃあそろそろお別れですね」

横島たちは夕食の最中もお互いの近況や周りの人達の近況を伝えてわいわいにぎやかに過ごしていた。
せっかくだからとお風呂に入ってから帰ることにした美神たちは、今日のことを思い出しながら文珠を起動し始めた。

「次は大晦日ですね。楽しみにしてますね。次はジークやワルキューレ、パピリオとベスパにも連絡を取って大人数で新年を迎えましょう」

小竜姫はにっこりと笑いながら次第に文珠が輝きだすのを見つめていた。

「次に会うまでせいぜい精進することじゃ」

猿神がそう言葉少なに別れの挨拶をすると、それが終わると同時に文珠が一瞬強く輝き後に残ったのは横島、小竜姫と猿神の三人だけとなった。

「はぁー、行っちまいましたね小竜姫様」

「そうですね。短い間でしたけど久しぶりにたくさん笑った気がします」

二人が今日のことを思い返しながら屋敷に戻ろうとしたとき、此処にはいないはずの声がした。
それは猿神には久しく聞かなかった声で、小竜姫には懐かしくどうしてここに?と思う声で、横島には初めて聞く声だった。







「久しいな斉天大聖。それに元気にしてたか?小竜姫。・・・始めましてでいいのだったかな?横島殿だな?私はそこにいる小竜姫の姉で大竜姫という」

どこか緊張した表情で大竜姫と名乗った美しく荘厳な感じのする女性は自己紹介をした。

「どうして姉上が・・・・・・」

という小竜姫の呟きがやけに肌寒く感じた風に運ばれていった。







つづく
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あとがきのようなもの

あぁ・・・遅くなってごめんなさい。そして分けわかんない展開でごめんなさい。Mirrorです。
どうも全く文章力が上達しない今日この頃ですがみなさまはどうお過ごしでしょうか?

なんかごてごての内容ですが、寛大なお心でお許しください。
あと、あまり突っ込まないでくれると嬉しいかもです。

それでは次回の外伝第003話で会いましょう!。





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