GS二次小説 「せめて絶望のない世界をあなたに」



第018話



「さて、来月行われる六道女学院の林間学校が終わればGS資格試験までもう残り僅かだ」

あの魔獣との戦いから数ヶ月がたったある日、鏡耶は冥子を自分の屋敷に呼んでいた。
鏡耶の屋敷を珍しそうに見ていた冥子だったが、 庭の中心に連れてこられて突然鏡耶から先の言葉を言われた。

「そういえば〜〜お母様がそんなことを言っていたかも〜〜〜」

何かを思い出すような仕草をした後、冥子はつい先日冥那から聞いたことを思い出した。
とりあえず冥子がGS試験があることを覚えていたことを確認した鏡耶は、早速本題に入ることにした。

「そこで俺は決めた」

「何をですか〜〜〜?」

言葉が足りずさっぱり分からなかった冥子が聞き返す。

「林間学校でお前が俺達の示す課題を達成できなかった場合・・・・・・」

一旦言葉を切る鏡耶。

「・・・場合、何〜〜?」

「その場合十二神将の全てを冥那に返還し、今後一切の接触を禁じさせる」

その言葉でそれまで何処か緩んでいた空気が、徐々に緊迫した物になる。
冥子は今聞いた内容を必死に理解しようとする。
その未だ少女から卒業し切れていない容姿と精神を持つ冥子を鏡耶はただ黙って見ていた。

過去に行った特訓という名のショック療法は殆んど効果は無かったが、 それでも冥子は泣くこと自体をできる限り我慢する事が出来るようになった。
その結果、前ほど暴走をしなくなっていた。 ・・・と言っても一週間に七回あったものが五回になった程度だったが。

冥子は必死で泣くのを堪えながら鏡耶に詳細を聞く。

「ふぇ・・・ど、どうして〜〜〜・・・・・・ぐすっ・・・・・・そんなひどいこと・・・ するんですか〜〜〜〜〜・・・すんっ・・・・・・」

「お前はどうやら十二神将を友達か何かと勘違いしているみたいだな」

「でも・・・私にとっては〜〜〜・・・」

両手を胸の前で重ねて必死で泣くのを堪えながら、それでも冥子は自分の意見を口にしようとする。

「確かに六道冥子にとっては幼少から一緒にいた友達のような物かもしれない。 しかし十二神将は現在六道冥那が正式に契約を交わし、その絶対的な支配権を持っている。 そして十二神将は代々六道家の当主に仕え、怨霊や悪霊、 妖怪といった存在を祓い続けてきた誇りある式神だ。 断じてお前の友達として存在するのではなく、 また用も無いのに召喚されられていることに関して何も思っていないはずが無いだろう」

「・・・えっ・・・・・・?」

鏡耶の言葉の意味が冥子には理解できなかった。
しかし鏡耶は構わず言葉を続ける。
「冥那が一時的にでも式神の支配権を渡しているから従っているだけであり、 本来ならば式神を侮辱するようなそんな命令には従いたく無いだろうに。 ・・・十二神将に限らず一般に式神と識別されている存在は、 そのものの能力にあった使われ方をして初めて歓びを感じる。 それ以外の行為など苦痛以外の何物でもない」

冥子の脳裏には今まで十二神将と過ごしてきた日々が浮かんでは消えていく。
確かに自分の周りには同年代の知り合いは殆んどおらず、いつも隣には十二神将がいた。
自分はそれでもいいと思っていた。人間の友達がいなくとも自分には十二神将がいるから。
この子達は六道家時期当主でもなく、一人の六道冥子として自分を見てくれていると。

でも・・・本当にそうだったのだろうか。

私は一度でも側にいる彼らに聞いたことがあっただろうか。

与えられた「側に誰かがいる」という安心感に満足するだけで・・・ 自分の都合だけしか見ていなかったのではないのだろうか。

私は彼らにとって、十二神将にとって求められる存在だったのだろうか。

私は・・・・・・私は・・・・・・・・・



私は・・・十二神将にとって邪魔な存在だった・・・・・・・・・?



「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」



自己の思考の渦に陥り、その辿り着いた考えに耐えられずついに冥子は叫び声をあげる。
そして一斉に冥子の影から飛び出す十二神将。しかし影から出てくるだけでその場からは動くことはなかった。
そしてそんな様子をただじっと見つめている鏡耶の後ろから足音が聞こえて来た。

「間一髪だったわね〜。私が来るのがもう少し遅かったらあの子達、ここで大暴れしていたわよ〜」

「その壁の影にずっと気配を消していた者が何を言っているんだ。 それに冥那が止めてくれるのは分かっていたからな」

足音の正体は冥子の母であり、現六道家当主の六道冥那だった。
冥那は言外に信頼していたと言っているように聞こえた鏡耶の言葉に頬を緩めると、 ゆっくりと鏡耶の隣に立った。

「でも本当にこれで大丈夫なの〜?おばさん不安だわ〜」

「林間学校で暴走させるわけにはいかないだろう?一応俺とタマモも付いていくが、 あいつをどうにかするつもりは全く無いからな」

「冥子は最後方で隠れていればいいと思うんだけど〜」

「それは前も言ったが、六道家の次期当主がそれでは他に示しがつかないだろう? それに本当に何かが有ってからは遅すぎる」

冥子の叫び声は続く。 その後悔や悲しみといった感情が籠もった声に胸が締め付けられるようになる冥那。

「私は・・・あの子に、冥子に無理を強いてきてしまったのかしら〜」

思わず冥那の口から後悔の言葉が漏れる。

「冥那は大丈夫だったかもしれないが、あいつは冥那ではない。 必ずしも自分と同じようにやれば上手くいくとは思わないことだ。 自分の娘だろう?もっと大事にすることだな」

「そうね〜。どこかで私が出来たのだから冥子も出来ると思っていたのかもしれないわ〜・・・。 母親失格ね〜、自分の娘のことすら理解できていなかったのだから〜」

それまで叫び続けていた声がだんだんと小さくなっていく。
霊力を限界まで使い切り、そして叫ぶことに疲れてしまったのだろうか ゆっくりと冥子は地面に崩れ落ちる。
しかしいつの間にか冥子に寄り添うように座っていたインダラによって、 冥子はインダラの背に凭れ掛かるように倒れこむだけですんだ。

「・・・・・・術者の指示無く、それでも守ろうとする動き・・・。十二神将はお前に期待しているみたいだぞ・・・・・」

冥子をインダラから受け取り優しく抱きかかえ、鏡耶はその場・・・・・・ 自分の屋敷の庭から客室のベッドに寝かせるために移動を開始した。



「ふーん・・・それで冥那と冥子がいるのね」

客室に冥子を運ぶと今まで鏡耶の部屋で寝ていたタマモが起きて顔を覗かせた。

「ああ、ここにいても面白くもないからタマモは食堂できつねうどんでも食べてきたらどうだ?」

「ん、そうする・・・・・・ふわぁ」

まだ眠いのだろうか?鏡耶の言うことに従い、欠伸をしながらタマモは部屋から出て行った。

「さて、それじゃあ始めるか」

そう言うと鏡耶は冥那にあらかじめ頼んでいたことをしてもらうよう視線を向けた。

「そうね〜。それじゃあまずはバサラとインダラ以外の皆は私に戻ってきてね〜〜」

冥那がそう言うと冥子の影に戻っていたバサラとインダラ以外の式神が現れ、 冥那の影に移動していく。
最後の一匹が影に入ったことを確認する冥那。そして愛おしそうに冥子を見る。

「強くなりなさい冥子。・・・・・・十二神将の為に、そして何より自分の為に」

「素質だけはあるからそう心配することも無いだろう。後はこいつ次第だ」

泣きそうな顔をしてじっと我が子を見つめる冥那に鏡耶は冷たくも事実を口にした。

「そうね〜、冥子ならきっと出来るはずよ〜〜。 ・・・でも君影君〜。どうしてあんな嘘を言ったの〜〜?」

「嘘?ああ、式神が歓びを感じないとか言ったあれか?」

「ええ〜。実際今私の影にいる子達は悲しんでいるわよ〜〜」

「確かにそうかもしれないが、正しく使われて歓びを感じるのも確かだろう? そして今までは十二体全ての式神を出していたんだ。 これではどの式神の扱いに関しても十分に理解することは無理だし、 式神の声を聞くことも難しいだろう?」

それにその方が十二神将にとっても自分を知ってもらえて嬉しいだろうしな。
鏡耶は冥那に聞こえないように呟いた。
そんな鏡耶の言葉に冥那は本当に嬉しそうに笑った。

「やっぱり君影君は色々考えてるのね〜〜。 これであとはわた・・・・・・・・・冥子との間に子供でも出来れば六道家は安泰だわ〜」

さりげなく?爆弾発言を言う冥那だったが、鏡耶は特に意識をせずに返答をした。

「何を期待しているのかは知らないが、俺は自分の血を後世に残すつもりはさらさらない」

その鏡耶の言葉には驚いた冥那だったが、それをおくびにも出さずに答える。

「そうなの〜?君影君くらいの能力者が六道家の家に入ってくれるならおばさん嬉しいのに〜」

「残念だったな。・・・・・・さて、俺はそろそろ降りてタマモと仕事の話をしているから、 あとは勝手にしてくれ」

そして鏡耶は客間から出て行った。



下の階に降りた鏡耶は、 仕事部屋のソファーに座ってのんびりとお茶を飲んでいたタマモに話しかけた。

「さて、今後の予定だが・・・」

タマモもある程度の予定は頭に入っている。
その結果、 記憶が正しければそろそろ林間学校とGS資格試験があることが検索に引っかかった。

「たしか林間学校まであと一ヶ月。そしてGS資格試験までニケ月だったわよね?」

「ああそうだ。まぁその間にGS試験を受ける資格を取るための クラス対抗霊能バトルって言うのが六道女学院であるみたいだけどな」

「ふーん、でも冥子はどっちにしろ出るんでしょ?」

特に興味も無いように答えるタマモ。

「そうなるだろうな。それに今回の試験には美神令子と小笠原エミも出るはずだ」

既に千年以上昔に美神令子から聞いた話を思い出しながら答える鏡耶。

「人間の友達を作らせようってわけね。 ・・・・・・なんだかんだいってちゃんと先生してるんじゃない」

「・・・・・・・・・うるさい」

行くぞ。と顔を見られないように屋敷の外に出る鏡耶をタマモは追いかけながら思った。

「やっぱり鏡耶は優しいわね。・・・・・・・・・当然だけど・・・」

そんな風に考えを巡らし、ふと気付くとどんどん先に進む鏡耶がいた。
タマモはそんな鏡耶をみて、置いて行かれないように走る速度を上げて追いかけた。

「鏡耶っ!ちょっとくらい待ってくれても良いじゃない」

走った勢いをそのままにして鏡耶の腕にしがみつきながら、タマモは文句を言う。
しかし鏡耶はタマモをチラリと見るだけでさして気に風でもなく、 タマモを腕にくっつけながらバイクが停めてあるところまで歩いた。
鏡耶から渡されたヘルメットを被りながらタマモは、 バイクに跨ってエンジンをかける鏡耶の後ろに座る。

「そういえば今日は何処へ行くの?」

いつもなら行き先を真っ先に教える鏡耶が今回はまだ教えてくれていないことにタマモは気付いた。

「ああ、今日は未来のための布石をしに・・・な」

鏡耶はそう言うとさらに何かを言おうとしたタマモに、舌噛むぞと忠告をした後勢いよくバイクを発進させた。





バイクで走ること数時間。タマモはバイクを停めた鏡耶の後ろから降り、 眼下に広がる自然を見渡した。

「ここは?」

「ここはおキヌちゃんの身体が封印されている山。 つまり妖怪・死津喪比女が眠っている山って事だな」

「ふーん。それじゃあその死津喪比女っていうのを退治に来たんだ」

「いや、それだとこの世界の横島達と会えない可能性が出てくる。だから退治はまた今度だ」

その妖怪・死津喪比女のことを聞いて覚えていたタマモは思ったことを鏡耶に質問した。
しかし鏡耶によって否定されたため、結局聞くとにした。

「それじゃあ一体何しに来たのよ?」

そう言うと鏡耶は手のひらから陰陽の文珠を作り出した。

「それって双文珠・・・そう、そういうこと」

タマモはその双文珠に浮き出た文字を見て鏡耶が何をしたいのか理解した。

「それじゃあやるぞ」

今度は単文珠を二つ創り「転/送」と創ると先ほど作製した「冬眠」と刻まれた双文珠を、 死津喪比女がいる場所を霊視したあと転送し、そして死津喪比女の反応がある前に すばやく双文珠も遠隔発動させた。

「これで例え死津喪比女の封印が解けてもあと二十年は眠り続ける筈だ」

「でもそれだとおキヌちゃんが神社に引っ張られたりしないんじゃない?」

それなら突然の目覚めは防ぐことが出来ると一瞬思ったが、 それだと色々と問題があることに気付いたタマモは問いかけることにした。

「そのときはわざとこちらで死津喪比女が目覚めたように偽装するから大丈夫だ」

何か聞いてはいけないようなことを聞いたタマモだったが、 まぁ鏡耶だし・・・といって勝手に納得させる。

「まぁ鏡耶のやることに文句は言わないけどね。本当に非常識よね鏡耶って」

「その非常識に惚れているんだろう?十分タマモも非常識だ」

さらりと大胆発言する鏡耶に対して、顔が赤くなるのを自覚しながらタマモは前から 感じていたことを聞くことにした。

「私はいいのよ。それよりも前に言っていた私の霊力のことだけど」

「ああ、もうちゃんと安定しているだろう?そういえばどの位で落ち着いたんだ?」

「ええ、封具のせいで全力はどのくらいか分からないけど今の状態で出せる全力は百四十マイトってところね。 付けてる封具の数が九個だからおよそ七万とちょっとってところかしら」

「だろ?それで俺が今の全力でおよそ百マイト。封具が十個だから全力で十万マイトってところだ」

「それだと私のほうが高いじゃない。いいの?」

「何言ってんだ。タマモは九尾、俺は人間。まぁ九尾としては弱すぎるかもしれないが、 そのほうが目に留まらなくていいだろうからこれでいいんだ」

「それもそうかもね」

タマモは自分の方が霊力が高いのを気にしたが、鏡耶の説得により一応は納得した。
それに全ての封具を外した場合は自分よりも強いのだ。
そう考えることにし、タマモは帰る準備をしている鏡耶の元に歩いていった。









――――――とある円卓のある部屋



一人の男が口を開く。

「―――ただいま戻りました」

「戻ったか・・・それでどうだった?月呪公爵」

「はい。私の「斬鉄剣」を念のために渡したのですが、全力を出させるには至りませんでした」

・・・ざわざわ
月呪公爵が話す内容に円卓に座っている他の者が小声で何かを話す。

「ほう?お主の斬鉄剣とあの魔獣のスピードでも倒せなかったというのか・・・ということは呪も・・・」

「はい。・・・残念ながら」

「老」と呼ばれる男の前に跪きながら報告する月呪公爵。
とそこに一人の男が割り込んできた。

「やはり公爵には荷が重かったみたいだな。私が出ていれば今頃は全て終わっていたものを・・・」

男は続ける。

「攻撃は最大の防御というのを知っているか、公爵・・・。能力なぞ調べなくとも最大戦力で 一気にカタをつけてしまえば良かったのではないのか?・・・・・・そもそもこの前もそうだ・・・」

なおも続けようとする染朱伯爵の横から、今度はさらに違う声が上がる・・・

「止めてください染朱伯爵!「老」の御前です」

「うるさい!お前は黙っていろ!!爵位を持ってすらいない成り上がりが私に口答えするな!!」

そんな言葉も一笑に伏せられ、染朱伯爵は切り捨てる。
しかし次に聞こえた言葉に染朱伯爵は先ほどと同じようには出来なかった。

「うるさいのは伯爵、あなたですわよ? それに爵位を口にするのなら伯爵よりも公爵を持つ月呪公爵様の方が上位なのでは?」

「ぐっ・・・」

言われていることは最もなので言い返せない染朱伯爵。 それでも何か言いたそうに月呪公爵を睨むと「くそっ!この女狐が・・・」という捨て台詞言うと 自分の席に座りなおした。

「ありがとうございます、羲和(ぎか)公主様」

「いいのよ。それにわたしもすっきしたから御礼を言うのは私の方ですわ・・・ニヤ殿」

妖艶に微笑む羲和公主に底知れぬ恐怖を感じたニヤ (と呼ばれたこの場で最も若い青年)は背中に冷や汗を感じた。

「そ、そうですか?あ、あはは・・・そのようなお言葉僕にはもったいないですよ」

「そうかしら?・・・まぁいいわ。ごめんなさい公爵。続きをお願いしますわ」

一連の騒ぎを特に何かをするでもなく見ていた月呪公爵は、それではと続けた。

「ですが、何も分からなかったわけではありません。 彼の攻撃の一つ・・・それについて分かったことがあります」

「ほう・・・?で、それは?」

「老」は先を促す。

「はい。極限まで細くした霊力の弦。それもありえないほどに圧縮した・・・・・・」

「なるほど・・・視認するのはまず不可能というわけか・・・しかし何故わかったのだ?」

「老」は月呪公爵の言葉から相手の能力を予想するが、 まずはきちんと最後まで話を聞くことにした。

「それはその弦であの魔獣を繭のように包んだからです。そして一緒に包んだはずの岩や草木は 潰さずに、魔獣のみを限定してその繭で押し潰してしまいました。」

「霊力を束ねるだけではなく、それに条件を付加するとは・・・霊力についての使い方を 完全に理解しているのだろうな」

「おそらくは・・・それでもし、彼を処分するとなると最低でも 騎士の位の者でないとまず無理でしょう」

「そこまでか」

「はい。彼は間違いなく一般のGSという分類から逸脱している存在でしょう」

「ふむ・・・・・・・・・しかしその能力の全てを見た・・・というわけではないのだな?」

「残念ながら・・・」

そして何かを考え込む「老」。次に「老」が何か口を開くまで誰一人として口を開くものはおらず、 ただ時間だけが過ぎていく。

時計の長針が一周しようとした頃「老」は顔を上げてまずは言った。

「これからの方針の前に、月呪公爵よ。報告ご苦労だった。席についてよい」

軽く頭を下げた月呪公爵は音も無く立ち上がり、自分の席に着く。
それを確認した「老」はゆっくりと言葉を紡ぐ。

「・・・では今後の方針を言おうと思う。皆のものよいか?」

一度辺りを見回し特に問題ないことを確認すると「老」は続けた。

「確かに彼の男、君影鏡耶は計画に対し邪魔になるであろう。 しかし彼一人では出来ることも限られてくるのも確かである。 そこで、彼からこちらに対して何か行動が有るまでは放っておくこととする。 しかし彼もGS。そして我々の行っていることはGSの仕事として依頼されるような内容なのも事実である。 ならば各々で迎撃準備を計画と平行して進め、万一彼が攻めてきた時に全力をもって排除するように」

その内容に異を唱えるのはやはり染朱伯爵だった。

「あのような若輩に好き勝手させるのですか!? 迎撃準備などせずともこの私があのような男簡単に殺してみせます!!」

「伯爵・・・お主は私の言に逆らうというのか?」

「老」がそう言うとあたりに言い知れぬ重圧がかかる。

「い、いえ・・・そういうわけではないのですが・・・」

「勝手なことはするな。余計なことをしてそれが失敗したとき我々のことを 知られる可能性も有るのだ。 こちらからわざわざ知る機会を与える必要など無い・・・。そう言っているのだよ」

「も、申し訳・・・ありませんでした」

その染朱伯爵の言葉で重圧は跡形も無く消えた。
そのことに円卓に座る者たちは安堵の息を吐く。

「くれぐれも余計な真似はするなよ。・・・計画に遅れは許されない。 全ては書の記述の通りに進めなければならないのだから」

気が付くといつの間にか「老」の手の中には一冊の黒い本が・・・

「そう・・・・・・・・・全ては・・・・・・・・・」

「「「「「全ては我等「唯一神」の名の下に・・・・・・!!」」」」」



そして円卓に集まった者達がその場から初めからいなかったように消えていく。
そして最後に残ったのは・・・・・・

「君影鏡耶・・・彼が試練を与えられし者か・・・・・・。どの程度の力が有るのか楽しみですね。 まぁ私の出番はまだまだ先のことですし、ゆっくり見物させてもらいましょう」

自分の影に沈んでいく最後に残った一人の存在。

こうして鏡耶の知らないところで物語りは進んでいく。







つづく
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あとがきのようなもの

注意
これは2006/01/22にアップしたものの加筆修正されたものです。
下の内容は前回のまま同じものですので、読まなくてもOKです。


お久しぶりです。三が日中にアップしようとして遅れたMirrorです。
あぁ!石を投げないで・・・orz

今回はもう色々と省略しまくりのインターバルみたいなお話でした。
いや、決して冥子の特訓を書きたくないからとかじゃないですよ?
きっと書きます。一応内容もあるといえば有るのですが、この辺は鏡耶君が説明したとおりのことを ずっとやっていただけですので・・・まぁあんまり細かく描くとちっとも先に進まないって言うのが 理由の一つでもあるのですけどね。

さて、次回は林間学校!舞台は海?山?どっちにしようか考え中(え? だったりです。
クラス対抗霊能バトルなんていうイベントまで入れちゃうMirror。書けるんだろうか?
そして新たな女性キャラを出さなくてはいけなくなり、その名前に苦戦しそうです。

今回の新キャラは羲和(ぎか)公主とニヤ。ちなみに公主という言葉は皇女に付ける封号(爵位) なのですが、別に羲和(ぎか)さまは皇女ではないですよ?あくまで爵位です。
一応並びとしては男性が王・公・侯・伯・子・男の順にえらいです。 公主は王と公の間くらいなのかも知れませんが、ここでは公と侯の間にあると考えて下さい。
そしてもう一人、ニヤ。彼は新参者です。爵位はありません。 地味に男爵より下に功爵とか騎士とかあるのですが、そこにもまだない存在です。 これからどういう扱いにするかは決まっているような決まっていないような・・・まぁ秘密ということで。 羲和(ぎか)さまも秘密です。でもちゃんと出番はあるつもり。

なんとも微妙な話でしたが、見捨てないでこれからも呼んでくれると嬉しいです。



それではまた次のあとがきのようなもので・・・





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