GS二次小説 「せめて絶望のない世界をあなたに」



第009話

「君が・・・宇宙意思・・・?」

横島は呆然とした。それもそのはずで、自分の望みを叶えるためにただひたすらに突き進んできたその目的である存在が、目の前にいる少女だと言われたのだからそうなってしまっても不思議ではない。

「そうです。・・・それで何故横島さんは此処に来たのですか?此処は見ての通りただ本があるだけのつまらない所なのに」

少女は何かを確かめるようにゆっくりと横島に話しかけた。

「何故・・・だって?そんなの君になら分かっているんじゃないのかい?」

横島は少女に話しかけられ正気に戻り、此処に来た目的を思い出した。

「そうですね。確かに先程まで、横島さんが貴方達の世界の神魔族最高責任者と戦っていた時までなら分かりました。しかしもし此処に来て貴方の心が変わってしまったらもう私には分かりません」

「・・・それはどういうことだ?」

横島は少女が言った意味がいまいち理解できなかった。

「先程も言ったと思いますが、私は横島さんたちの言うところの「宇宙意思」ですが本来の存在理由は「観測者」ですから」

横島はますます少女が何を言っているのか分からなくなりさらに少女に話を聞いた。

「観測者・・・?だからどうだと言うんだ。君は宇宙意思でもあるんだろ?」

「はい。横島さんたちの世界で言うところの宇宙意思にあたる存在です。横島さんたちの世界を第三者からの視点で見ていたという意味でなら・・・」

「?・・・だが、そうなら俺が此処に来た目的も知っているんだろ?」

「そうですね・・・知ってはいます。が、それだけです」

「どういうことだ。知っているんだろ?なら・・・・・・いや、待てよ。君は何だって?」

横島は何かに気付いたように少女に言った。

「君は・・・なんていう存在だと言った?」

「観測者・・・と」

「観測者・・・・・・かんそくしゃ・・・観測・・・・・・・・・!?まさか・・・」

「気付いたみたいですね。私は今横島さんが思っている通りの存在です」

「な・・・っ!?・・・・・・じゃあ今まで俺がしてきたことは・・・・・・」

横島はその少女の言葉で理解した。そしてもう自分の望みは叶わなくなってしまったことも。



「そう、私は「観測者」・・・この空間に存在する「世界」をただ観測し整理するだけの存在。ある「世界」に干渉することもなく、操ることもなくただただ見続けるだけの存在。そしてその「世界」が終わったときその「世界」が確かにあったことを記録するためだけに存在するもの。・・・・・・「世界」を見続け、その存在を残すモノ。それが「観測者」です」

横島は少女の言葉を聞いて膝を付いた。そして声にならない叫びを上げた。

その声は耳を塞ぐような大きいものではなく、とても小さいものだったがそれでもその声に含まれているものはとてつもなく大きかった。
その声にならない慟哭を聞きながら少女は続けた。

「私は横島さんがいた世界を観ていました。今まで私は何億もの数え切れなくなるほどの世界を観続けていましたが、横島さんたちの世界ほど変わった世界はありませんでした」

「私は基本的にその世界の中心となる存在を観るのですが、その世界の中心は他の世界では取るに足らないどこにでもいる普通の存在でした。」

「しかし、あるときを境にその存在は大きく変化を遂げます。その存在・・・気付いているとは思いますが横島さんのことです・・・はメキメキと力をつけ世界の存在を脅かす者を倒すところまでいきます。」

「ここまでなら他にも似たような世界はあったのですが、ここからが横島さんたちの世界は違いました」

少女は続ける・・・

「その他の世界はハッピーエンドで終わったのですが、横島さんの世界はどんどん悪い方へ傾いていきました。そして・・・」

「そして最後は全ての存在を消滅させた・・・か。まさにバッドエンドだな」

横島は力なく立ち上がってゆらりと少女に近づいていった。
そして少女の目の前に立ったと思ったら突然少女の胸倉を掴み上げ怒鳴った。

「ああ、そうさ!バッドエンドもいいところさ!でもな・・・ルシオラはこんな結末を望んでいたわけでもない!小竜姫はこんな結果にならないために消えていったんじゃない・・・タマモは・・・タマモはこんなことのために・・・・・・こんな現実を知るために俺を守って死んだわけじゃないんだ・・・」

最後のほうは聞き取れないほど小さくなってしまったが、少女にはしっかりと聞いていた。

「そうですね。それも知っています」

「っ!?うるさい・・・うるさいうるさいうるさい!!何故そんなことが言い切れる・・・!」

「私は観測者ですから」

「観測者か・・・それがそんなに偉いのか!俺たちが必死に生きているのに君はそれを見て笑っていたんだろ!」

「・・・・・・・・・いいえ」

少女は横島に掴み上げられながらもしっかりと答えた。
そして横島は少女が淡々とそう話すのを聞いてさらに怒鳴り上げようとした。

「いいえ・・・だと・・・・・・君はなら何故・・・そんなふうに普通にしてられる!」

「・・・・・・私は「観測者」です。観測者はたとえ何があろうともその世界には干渉することが出来ません・・・そういう存在だとさっきも言いました。ですが、何も考えていないと言うわけではありません。ちゃんと私にも感情はありますし、考えもします。今だって貴方とこうして話している」

「・・・君は・・・・・・」

「私だってここに観測者として存在した初めの頃は観ていた世界に対して何かしたいと思いました。悲しんでいるものがいれば慰めたかった。喜んでいるものがいれば共に分かち合いたかった。でも・・・何をどうやっても私はその世界に触れることが出来なかった。私に出来たのはその世界を観ることと、そしてその世界の足跡を記録に残すことだけ・・・一人で、ただずっとそれだけを・・・・・・」

少女は一気に話終わると自身を落ち着けるためゆっくりと深呼吸をした。・・・そこで気付いた。

「そろそろ降ろしてくれませんか・・・?」

横島はまだ自分が少女を持ち上げているのに気付きゆっくりと降ろした。
そして横島は自分のことばかり考え、少女のことを何も知らずに一方的に責めたことに自分の愚かさを感じていた。

「・・・ごめんな。俺は君の事何も知らないのに・・・・・・」

「いえ、すみませんでした。それに私が横島さんの世界に何も出来なかったのはほんとの事ですから」

少女は自分の非に対してすぐに謝罪できる目の前の存在について今まで以上に興味を覚えた。



そしてしばらく沈黙が続き、そろそろ耐え切れなくなった横島が口を開いた。

「あの、さっきの君の話で気になったんだけどいいかな?」

「なんでしょうか?」

「君はさっき世界には干渉できないと言ったよね?」

「はい確かに言いました」

「でも、俺のいた世界ではたしかアシュタロスと戦っていた頃に宇宙意思がどうこう・・・って聞いた覚えがあるんだけど、宇宙意思が君ならやっぱり干渉できるんじゃないのか?」

横島は遥か昔、まだ自分が自分に自信を持てなかった頃を思い出しながら聞いた。

「いいえ、例外はありません。ですが、神魔族最高責任者の二人は世界を観ていた私の存在に気付きました。そして彼らが私のことを宇宙意思と呼び始め、勝手に私のことをあのような存在だと決め付けただけです」

「そうなのか・・・じゃあだったらあれは何だったんだ?」

「宇宙を保とうとする力。それはその世界を保とうとする力です。そしてそれは世界を守ろうとする力ということ」

「ならいったい何がその力を振るっていたんだ」

「簡単ですよ。その世界そのものです。つまりこの世界で言うところの「本」そのものが自身を守ろうとして起こしたことです」

「「本」?」

横島は突然出てきたその言葉に首をかしげた。

「ああ、そういえばまだ説明していませんでしたね。丁度いいですから説明しますね。ここ「境界線」のこと「本」のこと」

そして少女は語りだした。







つづく
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あとがきのようなもの

読んでもらったら分かるんですが、ほとんど進んでいなくてごめんなさい。_| ̄|○
この辺はどうやって話を持っていけばいいかもう悩みに悩んだ末このようなさらにダメダメな展開になってしまいました。もしかしたらこんなとこいらないワイ!とっとと異世界なり逆行なりさせやがれ!な感じに思ったりするかもしれませんが、まぁ私のリハビリも兼ねてだと思ってくれると幸いです。

え〜「少女」ですが、名前はどうしましょう?個人的にはなくてもいいや〜って思ってます。でも彼女はちょっとだけ横島君に対して今後とっても嬉しくなるようなことをしてくれるはず!はず!はず!
次回で一応この境界線編は終わらせるつもりです。まぁ最後の境界線の説明に関してはかなり予想が出来ちゃうと思いますが、一応次回で説明させてもらいます。そんなの知ってるからいらないという人もどうかお付き合い願います。また、解釈とか説明がおかしかったら指摘してください。





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