GS二次小説 「せめて絶望のない世界をあなたに」
第007話
ピシ・・・ミシ・・・・・・
横島の心にひびが入る。
そしてそれは現実の横島にも確実に影響を与えていた・・・
「ガァ・・・ア、アアァァァ・・・・・・うう、ルシオラ・・・小竜姫・・・」
横島は自分が壊れていくのを感じていた。胸を見ればロンギヌスの槍が刺さっているのが見える。
横島は小竜姫の霊基構造を貰ったとき当時まだ生きていた猿神の進めにより、人間としての身体を捨てていた。
それは肉体という殻を捨て、神魔族と同じような魂に直接殻を被せている様な状態になりその瞬間から時間というものを捨てた。
その新たに得た身体にいま変化が起きていた。
ロンギヌスの槍が刺さっているところを中心にひびが入り始めたのだ。
「ねぇ、どうしたのヨコシマ?早く私の妹達を返してよ」
「横島さん、何かを殺すってそんなに楽しいですか?」
「ヨコシマ・・・」
「横島さん・・・」
ルシオラと小竜姫の弾劾は止まらない。
横島は耳を塞ぎたかった。でもどんなことを言われても二人は自分が嘗て愛した存在であり、もっと声を聞いていたいという気持ちがあった。
そして聞けば聞くほどより心に傷を負い二人にもう止めてくれと頼む。でも二人はさらに横島を責め続ける。聞きたくは無いがもう聞くことは出来ないと諦めていた二人の声を遮ることは出来ず、また実力を持って排除なんて考えることすら浮かばなかった。
ただ、心と身体が壊れていくのを感じるしか今の横島には出来なかった。
ビシッ・・・!
一際大きな音が聞こえた。横島は感じていた。
ああ、俺はここで終わってしまうのか・・・
「ごめんな、やっと自分でどんなことでもいいから先に進もうと決めたのに・・・」
心は既に限界に近く壊れている。今それでも正気を保てているのはタマモの存在があったからである。
しかしそれでも肉体の崩壊は止まらない。ロンギヌスの槍から広がっているひびがどんどん拡大していき、そこから光が漏れ始める。
「・・・こんなものか・・・やはり俺には結局何も出来なかったらしいな・・・」
横島はその光が自分の中にある霊気だと感じていた。
このまま全ての霊気が出たとき俺は死んでしまうのだと・・・
しかし、そのときそれは起こった。
―――何もう諦めてるのよ!しっかりしなさいバカタダオ!―――
「・・・・・・・・・・・・・・・え?」
横島はその声にはっと顔を上げた。
そこには胸から漏れている霊気が集まり一つの形になろうとしている。
―――だからシャキっとしろって言ってるのよ!そんなんだからいつまでも一人じゃ何も出来ないのよ―――
横島は目の前で形作っていくその霊気を見て、そして自分の目を疑った。
絹の様にきめ細やかで艶のある金髪。意思の強そうなやや釣りあがった眼。
そして何より、その特徴的な九つに分かれたポニーテール。
それは紛れも無く自分の愛した、そして最後まで共に過ごした最後の愛しい存在。
「・・・・・・タマモ・・・?」
―――あら、やっと私が誰だか分かったみたいねタダオ―――
「どうして・・・?」
―――どうしてって・・・タダオがなんかピンチっぽかったから助けに来てあげたに決まってんじゃない!相変わらず鈍いわね―――
「でも、タマモの霊基構造は俺の中の霊基構造と融合したんじゃ・・・それともお前も俺を騙しに来たのか?」
―――なんだ、ちゃんと分かってるじゃない―――
「え・・・?何がだ?」
―――だからさっきまで・・・って今もいるけど、ルシオラと小竜姫が偽者っていうか幻覚だってことよ―――
そう言ってなら私が来なくても大丈夫だったかな?とちょっとイタズラっぽく笑うタマモ。
そこで横島は気付いた。先程までぼろぼろだった心が今はもうそれほど苦しくないということに。それでも既に身体は崩壊しかかっていて危険な状態なのだが。
「・・・ああ、ありがとなタマモ」
横島は昔よくしていた様にタマモに優しく微笑んだ。
「じゃあ、お前は本物ってことなのか?でもどうやって・・・」
―――ああ、そのことね。簡単よ。単純にまだタダオと私の霊基構造が融合しきれていなかったってだけ。だからこうしてまだ話せるのよ―――
って言ってもこうして話せるのもあと少しだけだけどね・・・と今にも泣きそうな声でタマモは零した。
「でも、何で今になって?」
―――だから助けに来たのよ。と言っても助言だけだけどね!でも大丈夫・・・きっとタダオなら平気!だって私が愛してあげた男なんだから!!―――
タマモはとても嬉しそうに笑いながら言った。その笑顔は本当に優しく綺麗だった。
―――ねぇタダオ。私は前に言ったよね・・・「私はあなたに変わるななんて言わない。いつもタダオが正しいなんて思わないし信じてるわけじゃない。・・・でも私はタダオがどんなに変わっても、何を信じて行動してもそれでも構わない。
・・・・・・私はそんなタダオを認めてあげる。包んであげる。だからお願いだから少しは私に守らせて・・・」・・・って―――
「そうだったな・・・そんなこともあった」
―――ちょっとそれはひどくないかしら?忘れちゃってたんだ。・・・でも思い出してくれたんでしょ―――
「ああ、思い出したよ・・・」
―――ならもう大丈夫!こうして話してるのもそろそろ限界みたいだけど・・・私の力をしっかり感じてね!タダオは一人で戦ってるわけじゃないのよ。ちょっとむかつくけど、ルシオラや小竜姫だって一緒に戦ってるんだからね―――
・・・だからたまには私たちに任せてちょっとは休んだら?
そう言葉を残してタマモの姿を形作っていた霊気は散っていった・・・
いつの間にかルシオラと小竜姫の幻影が消えているのに気付く。
「・・・ありがとう。おかげで分かった気がする・・・」
横島は感じていた。タマモから霊基構造を受け取ったときに感じた違和感を。そしてその違和感が何なのかを。
「・・・ルシオラ、小竜姫、そして・・・・・・タマモ・・・俺はいい女に会えて幸せ者だったんだな」
どこかで「「「あたりまえでしょ!(あたりまえです!)(あたりまえよ!)」」」と横島は聞こえた気がした。
そして横島は崩壊寸前までに来た身体を支えながら右の掌に意識を集中させそれを創り、・・・そして発動させた。
それは全ての世界において横島にしか創ることが出来なかった物・・・それは四つの色をしていた。
黒、白、碧、そして紫
直径わずか三センチ足らずのそれは後にこう呼ばれた。
――――――「この世の全てを超越せし至高の宝玉・・・・・・其れ即ち『四色文珠』と謂う」――――――
つづく
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第008話へ
あとがきのようなもの
しまったーっ!まだロンギヌスの槍の空間が解けてない!!まぁ次回でVS神魔族最高責任者編は終わらせたいですね。
そしてタマモの口調がいまいちわからんー!こんなんではタマモスキー失格だ(T_T)
えっと、出てきました!横島君の新兵器「四色文珠(ししきもんじゅ)」
じつはこの言葉からこの作品は始まったと言っても過言ではないです。
この文珠はすごいのですよ!まぁそれぞれがちょっとずつ専門的ってだけなんですが、その威力や効果範囲がぶったまげ〜って感じです。
見事皆さんの期待にこたえられるよう頑張りますのでこれからもよろしくお願いします!
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