GS二次小説 「せめて絶望のない世界をあなたに」



第004話

「まぁええわ。タマモの霊基を吸収したのは計算外やったけど、みたところあんまし霊力自体は変わってへんみたいやしな」

キーやんもサッちゃんの意見に賛成なのかじっと横島のことを観察する。

「サッちゃんの意見に私も賛成です。確かに多少は霊力が増えているように感じますが、それでも私達二人にかかれば対処出来る程度です」

そしてじりじりと横島との間合いを詰めていく。しかしどれだけ近づいても横島からの反応はなかった。

「・・・・・・サッちゃん。どう思います」

「せやな、嬉しい誤算なのかも知れんけどワイらにとって良いほうの展開になったっちゅうことか・・・」

「だといいのですが・・・・・・」

二人はさらに間合いを詰めていき、あと数メートルのところまで辿り着いた。
そして横島がこちらを万一意識しないとも言い切れないので、横島が気付く前に一気にかたを着けようと構えをしたとき一瞬横島がこちらを一瞥したように見えた。

「「っ!!」」

二人は咄嗟に横島との距離を開けたが横島のいた場所を見ても横島はすでにそこにいなかった。二人はどこにいるのか探そうと横島の霊気を探知しようとしたそのとき二人は後ろから声をかけられた。



「なぁ・・・俺はどうしたら良い・・・・・・」

サッちゃんは驚いていた。先程横島に止めを入れようとしたときから警戒はまったく解いていなかったはずだ。現にさっきの横島の視線に気付いたではないか。
だが、実際はどうだ!?見えたのはそこまででいつの間にか自分たちの知覚能力より早く後ろを取られていた。
そして気付いた。
確かに霊力そのものの強さはほとんど変化が見られなかったが、横島は今までとは決定的に何かが違うと。
それが何なのか分からないがそれが原因で今自分ははっきりと感じているのだ。今まで決して感じることの無いものだと思っていた感情を・・・・・・すなわち恐怖を。

「いや、それは愚問だったな。俺はそれをすでに決めている。そしてそれを実行するには・・・」

キーやんもサッちゃんと同様に恐怖していた。具体的には言いにくいが、とにかく今までの横島とは根本的に何かが変質している。
それは魔族よりも神族の方が調査など調べたりすることに長けているからで、それでも恐らく神族最高責任者のキーやんだったからこそ気付くことが出来たものだった。

「お前たち二人を殺しその先にいるあいつと会わなければいけない・・・」

無造作に横島は腕を振り上げた。するとキーやんとサッちゃんの足元から強烈な風が巻き起こった。

あまりに突然のことだったので二人とも一瞬取り乱したが、すぐに体勢を整えると身体に霊力と魔力をそれぞれ纏いなんなくその風から退避し空中で停滞した。

「そんなことはさせません。私たちはなんとしても貴方を封印、もしくは抹消しなければいけないのですから。それは貴方もすでに分かっているはずです」

「そんなこと知るか・・・俺の力が他の世界に影響を与える・・・だったか?それこそ俺には関係の無いことだ」

横島は思い出す。今のこの世界の状況を。
すでにこの星に人間は存在せず、わずかな自然が残るだけになっている。それも神界と魔界の境界がなくなった余波で空には決して晴れることの無い曇り空のせいで百年しないで無くなるだろう。
反デタント派の神族は横島の覚醒と同時に横島を魔族の尖兵とし魔界に侵攻を開始。それに対抗するように魔族側も神界に侵攻を始める。そして戦場はお互いの中間にある人間界にまで及んだ。
そして横島を狙っていた神魔族は搦め手で横島ではなくその知人を標的にし始めたが横島が身を挺して守っていた。だがそれも神界と魔界の境界が撤去されたと同時に無駄に終わった。
力の制限を受ける人間界でも全力を出せるようになったからだ。
もちろん横島たちを守ろうとした神魔族もいた。その最も足るところが竜神族の小竜姫であり、他にも猿神、ヒャクメ、パピリオ、ベスパ、ワルキューレ、ジークであった。
しかし、多勢に無勢・・・初めにジークが。それに続くようにパピリオ、ワルキューレが戦死した。切れて今すぐにでも飛び出していきそうになった横島を猿神が抑え、それから逃亡の生活が始まった。

「そして・・・結局最後まで残ったのは俺とタマモだったってわけだ」

横島はキーやんを睨んだ。そして叫んだ。

「俺たちが何をした!?俺たちは何もしていないだろう!ただ、毎日俺が馬鹿をやって美神さんがそれをど突き倒して、それをおキヌちゃんが介抱して・・・
シロを散歩に連れて行ってタマモにきつねうどん奢って・・・・・・それで、ピートがいて雪之丞がいてタイガーがいて、隊長がいて、西条の馬鹿がいて、唐巣神父がいて、エミさんや冥子ちゃん、カオスにマリア・・・小竜姫にパピリオ、ペスパやワルキューレにジーク・・・
ただ・・・そんな当たり前の日常が嬉しくて、他にもたくさんのやつらと毎日を過ごしたいと思うのがそんなに悪いことなのか!違うだろう!お前らは・・・!!」

横島はそこまで言って昂ぶった気持ちを落ち着かせるために深い深呼吸をした。そして幾分気持ちが収まってきて再びキーやんたちの方を向いた。

「もうお互いに語り合う余地はないってことだ・・・」

ゆっくりと腰を落としながら霊波刀を両手に出す横島。その霊波刀は嘗てのただ霊力を刀の形にしていたのとは違い、完全に物質化しそのうえ籠められた霊力は上級神魔族ですら簡単に切り捨てるほどの切れ味を誇る。
神魔人になってからの横島の基本にして最強の装備だ。二振りのその霊波刀は互いに干渉しあいまるで鈴を鳴らしたかのように周囲の大気を震わせる。

リイイィィィィィィィィィィイイイイン・・・・・・・・・


―――世界の敵と云われ襲い来る神魔族を次々に屠ってきた、嘗ての二人の思いを形にしたもの「魔神剣 蓮螢/蒼竜」


そして対するキーやんとサッちゃんもそれぞれ己の最強の武器を手に持つ。

「そうですね。ここからは唯、お互いの信じる道のために・・・・・・」

キーやんはそう言って先の死闘で無くした己の傷口に右手を捻じ込みずるずると何かを引き抜いた。
それは一本の槍だった。嘗てキーやんを磔にした後、彼を貫いた槍。そのときの処刑人の名前を取ってそれはこう呼ばれている。


―――イエス・キリストを貫いた槍「聖槍 ロンギヌス」


それに貫かれればその者にとって最悪なありとあらゆる苦痛を与え、それを心が全て壊されるまで永遠に繰り返される裁きの槍。
当然その攻撃力そのものもまさしく最強といっても過言ではなく、相手の防御結界を完全に無効にする裁きの槍である。

「・・・・・・横島、貴方のその思い私が裁いてあげましょう」



「まさかワイが本気で戦うことになるなんてな。本気を出すんは堕天を覚悟で創造主に喧嘩を吹っかけたとき以来や」

キーやんのロンギヌスの槍を横目に見ながらサッちゃんもその絶大なる力を解放する。

ミシ・・・メリ・・・

何かを突き破るような音が聞こえたと思ったらサッちゃんの背中が盛り上がり始めた。

ガアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアッッ!!!

バサッ!!・・・・・・バササッ!!!

メキメキと背中から音が鳴り、何かが背中を破りながら出てきた。一見して大きな杭のようだが良く見ると違うことが分かる。
その杭のような物が左右に割れそれぞれが六枚に分かれた。・・・・・・そう、それは翼だった。だがしかし天使が持つ純白の羽ではなく、蝙蝠の翼のようなものが左右に六枚ずつ、計十二枚まるでそれを持つものを讃えるように広がった。


―――嘗て最強にして最凶の天使といわれた天使「明けの明星 ルシフェル」


「ワイには特にこれといった武器はあらへん。でもな・・・この姿のワイの拳骨は一撃で小さな島なら吹き飛ばすで」

そしてサッちゃんは四肢にとてつもないほどの魔力を籠め始めた。



嘗て日本の首都東京といわれた場所で、この世界最後の死闘が始まる。
観客はいない。・・・いや唯一人存在した。だが誰もその者の存在を知覚することは出来ず無常にもその死闘の幕は切って落とされた。





「「「さあ、はじめよう(ましょう)(ようやないか)!!!」」」





つづく
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あとがきのようなもの

おっしゃー頑張った俺!でもまたまた予想してなかった展開になってしまったよ。
でも少しずつ大まかだけど初め決めたとおりの方向には進んでますね。よかったよかった^^
え〜横島君の武器をはじめキーやんとサッちゃんのアレはおもいっきし自分で考えました。
おい!ちょっとちがうんじゃないか!?とかサッちゃんにもちゃんとした武器有ったじゃんとか云われてもそういう勉強してないのでごめんなさい。
まぁ軽く流してくださいね。そうしてくれないと困っちゃいます。





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