GS二次小説 「せめて絶望のない世界をあなたに」



第002話

サッちゃんは驚いていた。
自分が相手にしているのはいったい誰だ。
サッちゃんは今自分と死闘を繰り広げている相手のことをかなり前から知っていた。
それでも自分の予想では例え使い魔として神魔人横島と契約していてもここまでの強さになるとは思っても見なかった。
それほどまでに強いのだ。

「まさかこれほどまでワイと戦えるなんて思いもしなかったわ」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

だがサッちゃんはここでまだ全力を出すわけにはいかないと考えていた。
何しろこの後にはあの横島が控えているのだから。彼は恐ろしいまでに強くなっていた。先程からキーやんと戦っている時に生じる霊力の衝撃がここまで感じられることからも容易に想像がつく。
本来なら有り得ない事なのだ。人間の霊基が神族や魔族の霊基と混じっても消滅しないなんて。仮に消滅しなかったとしても本来の人格のままでいることなど出来るはずがないのだ。それでもまだ霊力が人間の範疇なら問題ではなかった。

初めてそれが観測されたのはあのアシュタロス戦の五年後。横島のアパートから魔力が検出されたのだ。そのときは魔族の霊基が横島の負の感情に感化され一時的に活動が活発になったのだと調査したヒャクメは報告した。
しかし、二回目はそれから半年後、三回目はさらにそこから三ヵ月後とどんどん魔族の霊基の活動が頻繁になっていった。そこで反デタント派の一部の神魔族は完全に横島が魔族になる前に魂ごと消去しようと計画した。
結果横島の抹殺は失敗したのだがそれがいけなかった。横島は自分を襲ってきた神魔族を撃退するために戦った。しかしあまりに消耗しすぎたのだ。そのせいで横島は魔族の霊基の活動に身体が耐え切れなくなり一気にそれは起こった。
それは横島忠夫の魔族化。ここで横島が完全に魔族になってしまえばまだ良かったのだ。しかしそうなならなかった。魔族の霊基の提供者・・・ルシオラの意思なのかわからないが魔族化は中途半端に終わってしまった。
つまり人間の霊基と魔族の霊基が完全に混ざってしまったのだ。それはあたかも遺伝子の二重螺旋の様だったと霊視したヒャクメは零した。さらに悪いことは続きやはりこれもルシオラの意思なのかお互いの霊基は共鳴を始めたのだ。
そしてその共鳴の余波であたり一面半径数百メートルにわたりあたりは更地になった。人魔横島の誕生である。

「しかもあの頃ですでに中級神魔族とタメ張れるくらいまで強うなっとるし、今はさらに神族の霊基まで持っとるしな」

多分その霊基も同じように共鳴して爆発的に霊力が上がってしもうたんやろな・・・などと半ば呆れながらそれでもサッちゃんは女の攻撃を捌きながら思考していた。

「ワイはこれでも嘗て明けの明星とまで言われた男なんやで・・・っとなめるなぁ!」

バキッ!

女の執拗なまでの攻撃を捌き、さらに自分の力を加えることで相手の体勢を崩したところでサッちゃんは女の後頭部に回し蹴りを入れる。

「・・・・・・っ!」

一瞬頭の中を揺さぶられて眩暈を起こすがすぐに体勢を整えサッちゃんに向かって霊波砲を放つ女。
すでにそれは予想済みだったのかサッちゃんは難なくかわし追撃を加えるために女の懐に潜り込む。

ドスッ!!・・・・・・グチャ

何かが潰れるような音を立てながら女の腹に膝を叩き込むサッちゃん。

「・・・スマンな。内臓のどっかが潰れたか」

そう言ってサッちゃんは止めを刺そうと特大の霊波砲を撃とうとする。そして今まさに撃とうとする瞬間自分の手が一瞬にして燃え始めた。

「チィッ・・・!そうやったな、あんさんはもともとはこっちの方が主力だったのすっかり忘れてたわ。自分のうっかりにも呆れてしまうでほんまに」



女はそんなことを言っているサッちゃんから眼を離さず自分の状態を確認する。

腹部を激しく損傷。・・・胃、腎臓、すい臓、完全に機能せず。また小腸にもいくつかの損傷が見られる。しかし頭部を含め骨には異常なし。
自力回復不可能と断定。マスターに頂いている。文珠の使用を許可。使用個数一つ。文字「治」と決定。相手を意識しつつ使用開始。

女はわずか二秒でそこまで判断すると自分の右耳にイヤリングとして付けている文珠を使用した。

「しもた!文珠か!!あんさんにも文珠を渡してるなんてちょっと考えたら分かることなのに・・・しもうたな。今までのが水の泡や」

そうこうしているうちに治療が終わる。そしてそれを確認しないまま女はサッちゃんに向かって霊波砲を連続して放った。

「何のつもりか知らんが、この程度の霊波砲でワイを止められると思うなや」

サッちゃんは自分の周りに薄く魔力で作った壁を張りそのまま女に向かって突っ込んだ。二人がぶつかる寸前サッちゃんは渾身の魔力を込めた左ストレートを女の顔めがけて放った。
しかし女はそれを予想していたかのようにサッちゃんの左腕の肘を左手で上に押し上げすれ違いざまにサッちゃんの左のこめかみに肘を食らわせた。

「ガァ!・・・今のは見えてからでも避けられるようなタイミングじゃなかった筈や。それなのに何故や!?」

サッちゃんはこのまま近くにいてはまずいと思いすぐさま女との距離を開けるために後ろに飛び退いた。
が、しかし飛び退き地面に着地したと同時に足元から先程サッちゃんの手を焼いた炎が再び今度は全身を焼き尽くした。
炎が収まり女は相手の死を確認するために焼け跡に近づいたそのとき・・・

「燃えたのはワイの魔力で創ったダミーや」

ズン・・・

という音と同時にサッちゃんは女の胸を後ろから貫いた。

「右のイヤリングが文珠なら左のもそうだと思うのは当たり前や。それにしても予知の「知」の文字なんてほんま反則やで・・・・・・っ!」

バッ!

サッちゃんは一瞬感じた殺気を本能の命じるまま飛んだ。そしてそれは正解だった。先程まで自分がいた場所を見るとやはり燃えているところだった。
そしてその炎のすぐそばから少しずつ景色から現れてくる女。

「なっ!なんでや!?確かにさっきワイが胸を貫いたはず。感触もほんまもんやった・・・そうか幻影か。それも現実に影響を及ぼすほど強力な」

そう、それは幻だった。ただしそのあまりの強さに実際の地面や空気にも影響を与えてしまうほどの。

「今のはマジであかんかった。避けられたのは単に運がワイに向いてたからやな。そしてやっぱり今もまだワイに運は向いてるみたいやな」

「・・・・・・・・・」

何を言っているのか分からないのか女は攻撃の手を休め少し首を傾げた。

「ずっとそうしてれば可愛いんやけどな・・・・・・わからんか?それはな右を見ればすぐに分かるで」

そう言ってサッちゃんは女から見て右を指差した。
そしてそれに従い自分の右を見る女。だがその一瞬後その瞳は驚愕に見開かれる。
どのくらいそのままでいただろうか。女はゆっくりと自分の腹部を見た。そこには・・・・・・



バスケットボールすら余裕で入るくらいの大きさの穴がぽっかりと開いていた。

「あ・・・・・・」

サッちゃんとの死闘が始まってから初めて口にした言葉は口から溢れてくる血流に飲み込まれた。

「あ、悪いな。あんさんから見て右やのうて、ワイから見て右やった」

そう言ってサッちゃんは自分から見て左を指していた指を自分の右に直した。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・堪忍な。おそらくこれで横島は絶望のままに自分の殻に閉じこもるか暴走するかの二つに一つや。ワイとしては前者の方が嬉しいんやけどな」

そうゆっくりと地面に倒れこむ女を見ながらサッちゃんはこちらにものすごい勢いでやってくる横島をつらい眼で見ながら呟いた。

「これしかほんとに道は無かったんかいな・・・・・・・・・あんさんはどう思う?







                       ・・・・・・・・・・・・・・・なぁ・・・・・・タマモはん」

サッちゃんは倒れて血を流しているタマモに向けてそっと呟いた。





つづく
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あとがきのようなもの

どうも初めての人は初めまして。二回目の人はこんにちは?(書き込んでるときは夜だからこんばんわ?)Mirrorです。
やってきました。第002話!いやーこの先どうなっちゃうんですかね?だんだん細かいところが考えていたところからずれてきました。

ん〜やっぱりサッちゃんの口調っていまいち分からんです。かなりあいまいっていうかめちゃくちゃ。
関西弁を使ってるはずなんですが、自分が関東人なんでさっぱりです。関西弁を使っている人ごめんなさい。

え〜女・・・まぁ本編を読んでからこれを読んでるなら分かったと思いますが、彼女です。
どうして口調があんなんなの?とかいろいろ思われる人もいると思いますが、あれにはちゃんと理由があるので。きっとそのうち分かります。

最後に私自身意識しているのですが私はかなりの量のSSを読んでます。
ですのでどうしても他の人の作品の影響が出てきてしまう箇所も今後あると思います。
なるべくそういったものは意識しているのですがなかなか難しいのでもし、
そういったところで気になったら遠慮なく言ってください。
出来る限り善処して対策を立てるので。

それでは今回はこの辺で。ここまで読んでくれた方いましたら多大なる感謝をこめて。
また次の話で会いましょう。





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